現在、感染制御方式として最も効果的な方法は、「検査と隔離」を利用した方法だと言われている。なぜ、この方法が好ましい方法なのかを十分に考えずに対策を実行して失敗することが多い。例えば、PCR検査に要する時間が長時間だと、その間の被検査者に対して、どのように対処しておけばよいのかが問題になる。被検査者が感染源になることがあるからだ。被検査者を隔離せずに放置しておくと、被検査者の陰陽が判明する前に感染源になり、他人を感染させる。そして、それを繰り返す。

 コロナ感染状態遷移図を利用してこの問題を考えてみる。PCR検査時の前後の状態が市中感染にどのように関係しているかを理解できる試みになる。同時に、感染モデルを作成し、現在起きている感染状況をモデルで想定しながら実績を評価し、問題点を抽出し、検討モデルを修正する作業の重要性が認識できるようになる。

 また、感染症対策と経済再生を同時に実行しようとして、対策に失敗し、経済的不況を招いてしまうケースがある。緊急事態宣言を解除するタイミングや沈静化したと判断する基準をどのレベルに設定するのかも問題になる。

 ここでは、その問題点を整理・検討する上で、考えなければならない次の2つの観点について、まず、試みてみる。

 1.検査の問題点

 2.試行錯誤の対策検討の問題点

 パンデミックになるような感染症の場合、ウイルスに関する情報も乏しく、特に、発生した初期の段階では適切な感染対策が実行できないケースが多い。そこで、過去に経験した感染予防を参考にして、どのような考え方に基づいて感染予防対策を進めていくかを検討する必要がある。この時に活用されるのが戦略的思考法である。

 戦略は目標を達成するための総合的・長期的な計画手段であり、戦術はその戦略を行うための具体的・実践的な計画手段である。戦略を決める際に、必要なのは現状を把握することである。組織の特徴や現在の環境、その実態などを把握し、整理する。次に、達成するための目標との差異を認識し、強みと弱みを明確にし、目標に近づくためのシナリオを作成する。シナリオが決まると、シナリオに沿ってどのように行動するかを考える。行動の結果が成功に結びつくためには作戦が必要になる。作戦を明確にすれば具体的な戦術を立てることが可能になる。

 ゲームで戦略的思考を進める場合、影響を与える要素として、右の図ような、プレイヤーの機能・特徴や付加価値、その範囲、戦術、ルールなどを考える。これらの要素を組み合わせ、一定の目標を達成するために、展開要領や要素・ルールの使用法、戦い方、その手順、活用する道具などを検討し進め方のシナリオを決め、具体的で実践的な計画を作成する。計画内容には、具体的な行動内容、スケジュール、費用、期待効果、組織や体制などが含まれる。

 同様にして、感染症対策の場合の戦略的思考法を進める考え方について、逐次、求めてみることにする。まず、最初に検討する内容として、次の課題に焦点を合わせた。

 1.感染制御と自動制御の比較

 2.新規感染者数の波の発生
 

検査と隔離を活用した感染制御の問題点

 「検査と隔離」を活用した感染制御には問題点がある。コロナウィルスが人体に感染し、症状が発生し、PCR検査を受けて陽性と判定されるまでに時間がかかることである。ウイルスが最も感染しやすいタイミングが発症直前と直後の段階だとすると厄介なことが起きる。感染し発症するまでは感染症に罹っていることも分からない感染者が市中に出歩き、この期間が最も感染しやすい。

 右の図のコロナ感染状態遷移図で考える。PCR検査の結果待ちの被検査者が潜伏期感染状態で野放しで市中を散策すると、隔離感染状態になるまでの期間感染源になって感染を拡大させる。また、PCR検査の結果が陰性の人の中の無発症感染者は、無症状者として行動を続けるために感受性状態に属する人々と接触を続け、次々と感染拡大の原因になる可能性が生じる。従って、PCR検査の結果、陰性となった人でも安全な人ではなく、危険な人がいることになる。更に、潜伏期感染状態での隔離処置が遅れると、感染が拡大することになる。PCR検査を短期間に実施し、その後の処置を適切な時間内に行わないと感染は一層拡大する。感受性状態の人の中にも症状を訴えない感染者がいる可能性もあり、これらの感染候補前の人も感染源になる可能性がある。感染要注意の閉鎖領域も社会の感染状態の変動や異質ウイルスの出現、人流の変化に伴って閉鎖領域の大きさや範囲も流動的に変化し、不確実性を高めていく。

 COVID-19の数理モデルで算出された結果によると、左の図に示すように、感受性保持者を3感染者群に分類して、発症隔離感染者数(黄)に対して、潜伏期感染者数(赤)と無発症感染者数(緑)の合計の比を求めると、後者の数が5倍以上多くなっていることがわかる。発症隔離感染者はPCR検査結果陽性と判定された人、潜伏期感染者は感染してPCR検査中の人、無発症感染者数はPCR検査の結果が陰性になった人である。データで把握している新規感染者数の数倍の潜在的な感染力をもった感染者が町中で散策している可能性があり、この人達が感染を拡大させていると言える。

 感染が拡大し、変異して感染率の高いコロナが現れるとこの数値はどんどん高くなり、感染拡大も広範囲に広がることになり、よりスピードをもって感染者を検出し、感染拡大を阻止する適切な処理が必要になる。コロナに関する詳細な情報が必要になるが、未知の要素が多く、収集も困難である。逆に、一瞬の隙を利用してコロナは感染を広げていく。もし、適切な感染モデルが存在して、そのモデルを使用して日々発生している状態が再現できるならば、問題点や具体的な対策の検討も可能になるが、現時点はそのようなモデルはない。

 そこで、感染防止対策として過去の経験や教訓を生かした検査による感染者の「検出と隔離」を、対象範囲を広げて厳格に行う方式が採用されることになる。ただ、検査中の人は感染者ではなく、市中に出歩き感染を広める可能性がある。検査に要する時間が日数レベルの大きさになると、その間に多くの人と接触する機会が増え、感染を広める。厳格な感染防止対策を実行しても、厳格な条件設定そのものが甘いものになり、感染防止効果を上げられないことになる。無発症感染者や異質変異ウイルスの問題が加わると感染防止対策の困難さが増す。これを強化する手段として、ロックダウン、緊急事態宣言、対象分野別に一斉休業、イベントなどの中止、外国人の入国禁止などの適用が求められることになる。そのように考えると、緊急事態宣言と蔓延防止対策を区別して、対応している日本の感染防止対策には基本的な考え方そのものに問題点を含んでいることになる。意外とそこに、庶民が納得できない根源が存在するのかも知れない。「甘い思考の日本の問題点」かも知れない。厳しさが足りない日本社会の姿が危険なイベントであるオリンピックすら中止できない状態にしてしまっている。G7やIOCなどの外圧によってオリ・パラの強行開催テストの賛同が得られると、それを客観的に評価する能力すら失われてしまう。

※状態遷移図に関する参考資料:「オートマトンと状態遷移図」参照
※COVID-19 数理モデル参考資料:「感染症はどのように広がるか」P37 SIIRモデル参照

 感染対策を安易に考えて試行錯誤の繰り返しで、対策が可能という考え方も大失敗に至る。コロナ感染拡大の要因が「人間の移動や動的な人口密度の増大」に起因するのであるから、経済再生のための要因である「人間の移動や動的な人口密度の増大」を実行すると、コロナも感染を拡大させる。多くの国民は、そのような感染拡大に脅威を感じ、自分の身を守るために政府の推奨する経済再生に協力しなくなる。従って、そのような条件下では経済再生も不十分となる。国民は金がないから行動しないのではなく、生命の危険を感じるから協力しないのである。だから、「移動と密の発生」を避けた経済対策の検討が必要になる。

 テレワークによる通勤行動の抑制やテイクアウト活用による外食機会の抑制、大規模イベントの中止要請、大規模店の営業休止要請、観客数制限要請などは、このような条件を満たしている内容であり、第1波の時に採用し、感染拡大対策としての一定の効果を発揮した。最近では、GoToトラベルを口にする人すらいなくなっている。しかし、その結果として、運輸業や飲食業、関連業種の赤字化をもたらした。人間が行動すればコロナも行動するため感染防止と経済再生は同時に成立しなくなる。オリパラもこの範囲内のイベントである。人の行動の結果としてコロナの感染拡大・沈静化現象が現れるが、人の反応速度とコロナの反応速度は異なっている。人の反応速度は週単位であるのに対して、コロナの反応速度は時間単位である。感染が拡大し始めると短時間に感染が広がり、沈静化すると短時間に感染源が進むが、ある段階まで進むと増大しなくなったり、減少しなくなったりする現象が発生し、この現象に別の外的要因が加わると波の現象を発生させるようになる。変異ウイルスの出現のようなある周期での現象が重なると連続的な波が発生することになる。

 感染症対策も感染状況の進展と経済活動への影響を考慮しながら種々の内容を検討する必要がある。初期の時点では、限定した範囲のロックダウンで早期に沈静化が可能になるが、市中感染が広がり、感染経路の特定も不可能になると、実行できる唯一の手段は、「安全な領域は家族単位の中にのみ存在する」と考えて、それ以外の人との交流や不要・不急な行動を厳格に遮断する対策が必要になる。家族中心の感染対策を採用し、最も厳格な条件での感染防止対策を実行できるが、人の行動管理を徹底できる反面、経済的犠牲や生活上の問題を発生させる覚悟が必要となる。

 感染制御の対象となる閉鎖領域が狭い範囲の時、その範囲内の人の行動も比較的管理が容易で、厳格な管理も徹底しやすく、感染を広げるウイルスも比較的短時間で閉鎖領域内で飽和して感染速度を減少させ抑制効果が現れやすくなる。しかし、感染形態が複雑になり、市中感染の形態を表すようになると見かけ上の閉鎖領域が広くなり、感染の広がりが飽和するのに要する時間も長くなり、感染を拡大させる。

 厳格な管理を実行する場合、その期間をどの程度にするか、厳格な管理の緩和をどのようなタイミングで、どのような手順で実行することが適切であるかを検討しながら感染制御することになる。期間が長期になる場合は、厳格管理される対象者に適切な情報を責任者が発信し、適切な期間、持続的に安心して行動できる環境を整える必要がある。必要に応じて具体的な支援策を検討し、提案しなければならない。経済的な影響を考慮して、短期間に感染防止の条件を緩和し、経済再生重視への切替を行うと感染制御に失敗し、同じ事態を繰り返すことになり、第4波、第5波などを発生させることになる。その場合に大切なことは、緩和するタイミングの決定に時間軸を重視し、余裕ある安全性を前提に適正な抑制監視期間を設定できるかどうかとそれを実施する体制の確立である。

 最終的に感染拡大を沈静化できる手段はワクチンの接種と医療技術の確立になるが、日本の場合、ワクチンの開発、生産を含めて、自国で実施できる体制が不十分で、外国からのワクチンの供給に頼らねばならない状態である。世界のワクチンのサプライチェーンの状態によっては短期的な解決には問題が生じる。これらの問題は平成時代の「政治の貧困」がもたらしたものであり、我が国としては、海外からの侵略の防備と併せて、ウィルス等の感染防止対策についても、常日頃から十分に調査研究開発を進めておく必要性があったものである。それを国として怠った。今後の課題になるだろう。

感染症対策と戦略的思考

 コロナウイルスは、人間を利用して感染し、自分達の生存領域を拡大していく微生物である。コロナが感染していく有様は人の行動によって左右される。右の図のコロナ感染モデルは、一人の人がコロナに感染して発症し、検査後陽性と判定され、隔離されて全快し退院するするまでのプロセスをモデル化したものである。感染プロセスの全日程は28日間とし、全快までの隔離期間は10日間、その他の各工程は3日間と仮定して作成している。感染情報は、感染者が陽性と判定されて、コロナ患者としてカウントされたタイミングを表している。このモデル図では、感染後12日間経過して、一人の感染者が社会に新規感染者として公表され隔離されることを示している。

 自動制御に使用するフィードバック制御系の図を下に示す。フィードバック制御系では、制御量が変化するとセンサーがその変化量を検出し、目標量と比較してその差分をコントローラ、アクチュエータ、メカニズムを利用して修正する動作を行う。通常の制御系では適正な応答速度でこの修正制御が実行され、適正な制御量になるように短時間で修正が行なわれる。機械装置やプロセスの制御など、多くのシステムで利用されている工学系での基本的な制御の考え方である。

 感染制御の場合、フィードバック制御系のように、短時間にシステムを安定させるような動作はできない。これは、センサやコントローラ、アクチュエータなどの制御要素やその仕組みに相当するプロセスの各要素の機能や特性の差によるものである。感染モデルのセンサ部分について考えてみよう。制御システムのセンサーに該当する要素は、感染、発症、検査、陽性の4プロセスで、モデルが示す日数では9日間必要である。コロナの感染が認識できるまでの9日間に市中で感染は拡大する。

 まず、最初の9日間の情報に基づいて感染制御は行われる。第1日目の発症者は陽性確定3日後に、感染後12日目に隔離され、他への感染の抑制が行われる。しかし、感染抑制の効果は直ちに現れず、一定の期間が必要となる。第2日目以後の発症者も同様に隔離されていく。その間に、無発症感染者の累積数は増加していく。検査中の感染者や無発症感染者などが増加すると、特定の場所や市中での感染は拡大する。このような現象が少なくとも10日前後続くことになる。感染者数の増加と感染者を抑制する効果の差異によって、新規感染者数は増大したり、減少したりするが、ロジスティック曲線の増加率小の期間では大きな問題にならないが、その期間を過ぎると、感染拡大増加率が増加の領域に入り、変曲点に達するまでの領域では新規感染者数はどんどん増加する傾向になる。

 飲食業の自粛やテレワークの実施などの対策が行われても、感染者数の増加よりも感染抑制の効果が大きくならないと、新規感染者数は減少するようにならない。感染者数が増加する傾向が現れると、現在検査中の人や検査結果が陰性で感染力を有しいる人の数は日々増加していく。抑制効果はそれほど大きくならないため、感染者数はどんどん増加する。感染者数が増加している間はこの現象が繰り返される。しかし、曲線の変曲点を過ぎ閉鎖領域での実効再生産数がある一定値に近づくと、逆に、増加率が減少し、飽和状態に近づくと、コロナの感染拡大の傾向が頭打ちになる。その時に、感染抑制効果が働いていると、新規感染者数は感染拡大から感染減少傾向に変化し、時間の経過と共に、新規感染者数は減少していくことになる。このことは、コロナの現象がロジスティック曲線の傾向に従って現れることから理解できる。しかし、飽和領域に近づくと、減少率が少なくなる現象が発生し、感染者数の減少率が小さくなる。この時に、変異型のウイルスが増加したり、人流が増加する要因が発生すると新規感染者数は再び増加することになりリバウンドが発生する。このリバウンドの発生は政策的な失敗によって周期的な波となって現象が現れることもある。この現象が繰り返されたり、回復者の抗体の持続期間が限定される状態になったり、閉鎖領域の感受性人口が一時的に増大したりするようになると、閉鎖領域に複雑な感染状態が生じてしまう。ワクチン接種が増えても集団免疫の閾値が変化したり、免疫形成のし難い傾向が現れる可能性が生じたりする。

 左の図を使用して一定の閉鎖領域での感染現象を考える。閉鎖領域の感染者数が増加し隔離されたり、感染回復後に抗体獲得者数(R)が増加すると時間につれて感受性人口(S)が次第に減少するため、赤い曲線の新規感染者数(I)は、最初は増加傾向を示すが一定値になると必ず減少し始め、山形の新規感染者数を示すようになる。これはロジスティック特性が示す繁殖する生態の自然の原則である。この赤い山形の曲線の形状が閉鎖領域の条件やコロナの感染確率などで変化する。ワクチン接種が進んで抗体獲得者数が増加した場合にも、これと同じ現象が現れて赤い曲線の山の高さは次第に小さくなり、ある一定値以上になると赤い曲線の山は発生しなくなる。このある一定値が集団免疫の閾値になる。

 この自然現象を活用すれば効果的な感染制御が可能になる。感染対象になる閉鎖領域の感受性人口を外部から強制的に縮小すると、赤い曲線の山の高さを低くできたり、一定値以上になると赤い曲線を消すことも可能になる。人流の抑制や蜜の発生防止などの手段をロジスティック曲線の特徴と組み合わせて使用すると効果的な対策を実施することができる。ロックダウンは経済的効果を犠牲にして感受性人口を減少させ感染抑制効果を高める手段に利用される。自粛要請レベルの対策では、感受性人口の対象者や無症状感染者は無理してまで要請通りに行動する必然性を感じないため感染抑制は機能せず感染者数を拡大させる。更に、感染現象が複雑になると、感受性状態や無症状感染状態の対象者は自分の症状を自覚して行動できないため、感染抑制対策が自覚できずに感染を拡大させる。更に、オリ・パラレベルのイベントを強行し、その成果をテレビなどを通じて報道すると、その歓喜に多くの人が打ち負かされて、自粛要請レベルの行動をすべて打ち消して無意味にしてしまう。自宅でテレビで観戦を、首相や都知事が要請してもそれらの内容は対象者には伝わらない。現在のように多様化した社会ではこれが当たり前の現象である。これらのことを予想できずに、アスリートのみを甘やかし、庶民を自粛で我慢させようとする指導層の行動が社会に分断や格差を招き成功しない。

 ロジスティック曲線の特徴であるコロナ自身の抑制効果と人の社会での感染拡大抑制効果が共に現れると、感染傾向は必ず沈静化の方向に働いて、新規感染者数は減少を始め、次第に減少していく。それ以外の対策がその後に実行されないとこの傾向も変化する。新規感染者数の減少によって、コロナ自身の抑制効果も次第に弱くなって、感染者数の減少割合が小さくなり、やがて機能しなくなる。ある水準まで新規感染者数が減少した時に、規制緩和を実施したり、気の緩みなどが現れると、人の流動が変化し、感染者数の下げ止まりや変異種の出現、閉鎖領域の人口増加のような感染増加の要因が発生すると、新規感染者数が増加する傾向が現れたりする。年間行事であるゴールデンウィークの人の動き、夏期の盆休み時の人の動き、春や秋の旅行シーズンの人の動き、暮れや正月の動きなど、社会のイベントやオリ・パラのような世界的なイベントをきっかけにして、人流や生活様式が短期間に変化すると、見かけ上の人口増が対象となる閉鎖領域に影響してロジスティック特性により感染は急激に拡大する。規模が大きいほど広範囲に拡大する。昨年政府が推進したGoToトラベルなどは第3波の感染拡大をもたらした。英国では、G7開催でインド株の感染拡大が発生し、開催前に比較して開催後40倍の感染拡大をもたらし、再び長期のロックダウンを実施することになった。

 一定期間「下げ止まり」現象が持続し、その後、変異種の出現や水際対策の不備などが発生すると、新規感染者数は増加傾向に変わり、次第に波は大きくなっていく。次から次に現れる波の高さは高くなり、減少から増加に変化する新規感染者数のレベルも高くなっていく。東京都の新規感染者数の場合、第1波の下げ止まり数は30人/日、第2波は150人/日、第3波は254人/日、第4波は388人/日と増加し、波が増えるたびに100人/日以上増加している。波が周期的に繰り返されると、波の立ち上がりも速くなっていく。波高や波長も変化する現象が現れるようになり、新規の波が発生する度に変異ウイルスが現れると、医療体制も崩壊し、経済的な影響も甚大なものとなり、短期間では復旧できない経済状態になっていく懸念が増していく。しかし、オリ・パラは開催に進んでいる。

 日本社会で起きているコロナ禍に関連する現象はこれに近い状態だと考えられる。周期的に発生する波が、連続した政策的な失敗に起因する場合には深刻な事態になる。感染の波は次から次と繰り返して押し寄せることになり、大津波のような現象になる。必ず、第4波、第5波、…、の現象が発生する。この波の現象とオリ・パラの実施時期が合致すると、第5波や第6波の波が発生し、ワクチン接種が遅れたり、接種効果に変化が生じると日本社会は大変な事態になる恐れがある。

 これを食い止める手段は、有効なワクチン接種の実施や短期間に完治できる治療法の確立と言うことになる。しかし、コロナ感染モデルの感染から陽性までの検査工程の改善が行われて、この間での感染数が抑制されるようになると波を押さえる手段として利用できる。現在、その手段は存在していない。検査対象者数の単純な増大だけでは決定的な解決策にならない。英国ではAIを利用して、秒単位で検査できる仕組みを検討中との情報がある。実検査時間の短縮やデータ収集時間、事務処理時間などの仕組みの合理化と通信、コンピュータシステムの活用などが実現すると大幅に改善される問題である。これらも、日本では社会システムの遅れの問題が関係している。検査の仕組みの改善、システム化による感染情報の把握、隔離管理の徹底、人流制御の考え方の整理など、感染制御の考え方を見直し、新システムの確立が急務である。

 検査期間も短縮されない。検査期間中の隔離も行われない。検査対象でない無症状感染者が町中の至る所で散策している。これらの状態は感染拡大を進める環境を整えていることになる。更に、変異ウイルスの感染拡大が広がり、期待のワクチン接種の時期がずれ込むような事態になり、第5波、第6波の波が現れると、首都圏の1日の新規感染者数は千人を超える規模になったり、波の期間も6ヶ月以上の長期になる可能性が生じることになり、「緊急事態」ではなく、「非常事態」になる。更に、感染拡大の波が周期的に発生する現象が続くと、頼みの集団免疫の確保も閾値などの変化で容易でなくなる。

 これらの問題は、本来ならば、平成の30年間の間に検討し、社会システムとして確立しておかなければならなかった問題である。金融政策に頼りすぎて、社会システムのデジタル化や科学に基づく政策の実施、社会インフラの整備などを怠った政治政策の失敗が現れた一例である。社会システムの重大な欠陥がコロナによって指摘されたことになる。

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